シミュレーション
THERMORender は3D CAD Vectorworksのモデルがベースになっているので、建物を見る角度を変えたり、フライオーバーやウォークスルー、動画など、Vectorworksの機能をフル活用した熱環境シミュレーションが可能となります。
新しい都市デザイン
都市に潤いを与える都市緑化デザインは、人工物に囲まれ熱容量が大きく、水辺の少ない都市部においては重要な環境装置と言えます。これまでは主に景観設計として捉えられてきた都市緑化手法も、今後は地域環境・地球環境にとって大きく貢献する要素を含んだ環境設計、計画手法になります。
THERMORenderでは、緑化前後を比較し、街区のすべての表面から大気に放出される顕熱量(HIP)の差を確認することができます。さらに建物エネルギ-消費量計算から算出される人工排熱量と、表面からの顕熱量(W/m2)を合算することで、この街区全体から放出される大気顕熱負荷量を得ることが可能です。
地上部と屋上を大幅に緑化したシミュレーション例
現況では、ほとんどの建物屋上部が60℃を超える表面温度であるのに対し、緑化後では、約20℃も表面温度が下がっています。これは、屋上緑化によるものですが、屋上緑化は、さらに建物内部に伝わっていく熱量も減らし、建物上層階の室内熱負荷低減に寄与します。
歩行空間の熱環境を意識したシミュレーション例
このシミュレーションによる検討例では、一般的なアスファルト舗装の現況と、舗道部と中央分離帯に保水性インターロッキング舗装を使用し、地面の表面温度が上昇する前の朝方に散水することを条件として計算しています。図は15時時点の表面温度とMRTを比べたものです。この結果から表面温度、MRT共に低下していることが見てとれ、保水性材料が効果的に機能していることが分ります。
グリーンファクトリー
地球温暖化対策は、新たな計画建物や計画街区だけのものではありません。既存建物でも大きな課題の一つであり、適切な改修は屋内環境を快適にし、それによって空調などの運用経費を軽減できるメリットもあります。
このシミュレーションでは、約3000m2の物流倉庫の利用用途が変わったとの想定シナリオから、グリーンファクトリー改修を計画し、その結果からどれくらいの効果が得られるか、街区の全表面からの顕熱量(HIP)、建物熱負荷量、建物エネルギー消費量、CO2排出量を算出し評価したものです。
緑化手法の効果を多角的に検証
断熱効果の少ない折板屋根を屋上緑化し、壁面緑化を行い、大型自動車の待機場所に保水性舗装を行うことで、大気顕熱負荷の指標であるHIPがピーク値で約10℃低下しました。
建物顕熱負荷量でも、大幅な低減が確認でき、屋上緑化の断熱効果が効果的に機能していることが見てとれます。これにより空調システムもこれまで以上に効果的に機能するであろうと予測。建物エネルギー消費量計算では、エネルギーの消費量と共に、CO2の排出量の低下も確認でき、緑化手法の効果が多角的に検証できました。
電力やガスなどのエネルギー消費量の削減、CO2の排出量の削減は社会的要請度も高く、対応が迫られていますが、周辺の熱環境を考えない室内で完結した省エネ設計では、環境負荷低減を唱うにはやや弱く、その点、このシミュレーションにより、緑化手法では両方をバランスよく考慮していることが確認できました。