Vectorworks活用事例

松田まり子建築設計事務所
松田 まり子

Vectorworks活用事例

松田まり子建築設計事務所
松田 まり子

設計に”やさしさ”をもたらすBIMの力

沖縄に構える設計事務所。蛙がないたり鳩が舞い込んだりと賑やかなアトリエ

- Vectorworksを使い始めたきっかけは何ですか? -

大学卒業後に就職した会社で、Vectorworksと出会いました。大学で使っていたJw-cadは数値を入力して描くのに対し、Vectorworksではまず四角を描いてから割り振っていく描き方で、プランの仕方がすごく自分に合っていると感じました。転職してほかのCADを使う機会もありましたが、自分で独立する時は絵を描くような感覚でボリュームをスタディできるVectorworksが良いなと思っていました。

しなやかに働く方法の模索からBIMを始める

- 当時は2Dで描いていましたか?-

はい。独立するまでは2Dオンリーでした。その頃は設計業務に没頭するあまり長時間労働が日常で、無理が重なって体調を崩したりしていました。健康で前向きに関われることが建築との誠実な向き合い方なのではないか、と感じ結婚を機に一旦設計から離れ、NPO蒸暑地域住まいの研究会の理事長として、省エネ住宅の住宅の研究や普及推進活動に取り組みました。

螺旋階段のある住宅の3Dパース

妊娠・出産を経て子どもが小学校に上がるタイミングでもう一度設計の世界に戻ったのが5年前。かつてのような「無理をしてでもやりきる」働き方ではなく、自分と家族、クライアントとの時間を大切にしながら、しなやかに働く方法を模索して、出会ったのがBIMでした。

VectorworksのBIMの良いところは、無理しないで進められるところ。一気に3DにしなきゃいけないCADもある中で、Vectorworksは「ここだけはBIMでやって後は2Dでも良い」ができる。少しずつ始められるのが私にとっては大きなメリットでした。

基本図はとりあえずBIMにして、詳細図はまた後で。便利なところから使い始めて、少し使えるようになったら少しずつBIM化の範囲を広げていきました。自分でわからないことは識者に質問しまくって、今考えると迷惑だったかと思うのですが(笑)助けてくれる方がいたから始められました。

BIMモデル。打ち合わせにも活躍する

楽するための努力を惜しまない

- BIM設計は、何から始めましたか? -

まず、BIMとは何かという動画を見て「お~!?」と感銘を受けまして(笑)これならいけるかもと思ってはじめました。

第一段階の目標は、基本設計からBIMをはじめること。私は基本プランを考えている時間よりも変更作業をしている時間が長いなと思っていまして。基本設計で8割終わった気になっていても実は2割くらいしか終わっていなくて、ここからの変更作業が果てしなく長い(笑)

沖縄では特にお盆で親戚が集まったあとに、大幅に変えてほしいと言われることが多いんですよ。「おじいにこう言われたから」とか。それに対して、しっかり説明できるような資料を作るんです。「変更するにしても、こうすればちょっとの変更でコスト変えずにできますよ」など色々と案を出します。変更作業をするたびに全部やり直し、みたいなことも結構常々なんですが、BIMを使うとその辺りの作業と時間を補ってくれます。基本設計だけでもBIMを使えるのがメリットとして大きくて、ボリュームを変えたら立面断面につながっていてすぐ変更が反映できることが、ありがたいと思いました。

BIMモデルから取り出した図面

基本設計のBIMができたら「建具表もできると良いな」とか「仕上表も作れる」などやりたいことを少しずつ段階を踏んでいきました。敷地図や面積表も使いやすくて、アイソメも、パッとできる展開図にも感動しました。これからも設計の仕事は続けるだろうと思うので、「こんな感じでもっと楽していこう。楽するための努力は惜しまないでいこう」と思いました。

アルバイトの人にも「BIMやってごらん」と言って積極的にやらせています。学生たちの間で「松田事務所に行くとVectorworksのBIMやらされる」と言われるようになりました(笑)「操作に慣れてきたら、ほかにも便利な機能見つけて教えて」と伝えると、若い子はいろいろ触ってみるので「この方が良いです」とか工夫して新しいことを発見するんです。新入社員もクラスを細かく設定し始めたり、スタッフを巻き込みながら、みんなでステップアップしていきました。

花ブロックなど詳細に作られた模型

BIMの無理強いがないソフト

BIMを始めるなら1枚の図面を描くのに30~40時間研修を受けてから、という風潮がある中、Vectorworksの場合は1つの物件であまり時間をかけずにスタートできて、また次の物件で少しずつできることを増やしていけるのが魅力的でした。難しい作業はスキップすることもできるので、VectorworksはBIMの無理強いがないんです。

今でもまだ詳細図や納まり図などは2Dで描くような使い方をします。現物が表現できない場合はイメージをペタっと貼って「見せた絵と違うじゃない!?」と言われることを回避します。

Vectorworksで作成した外観パース

BIMモデルも細かいところを段々と作るようになり、BIMモデルを見せながら打ち合わせをしています。イメージがしやすいので設備も照明器具もBIMモデルに置いて、コンセントの位置も結構話題に出てくるので無償プラグインのコンセントツールがありがたいなと思います。電気図にも表示されるので、2Dも3Dも一緒に作りながら進行できるのが、時間がない自分にはメリットでした。

建具表はグラフィック凡例を使って、断面詳細はBIMモデルから取り出して必要なものを注釈で描いて、構造はもらったPDFをペタペタ貼ります。あとは、私はスペース機能が好きでよく使います。変更すると情報がすべて取れるので。仕上表もスペースから持ってきて、追記したいことだけワークシートに入力して作成します。打ち合わせで畳の畳数をよく聞かれるので、平米からすぐにわかるようにスペースと紐付けてデータタグで設定しています。

お客様の子どもが遊んでくれるので、模型も作りますね。花ブロック部分は3Dプリンタで作っています。いろいろな模様を作って、選んでもらうんです。懐中電灯を当てると影ができるところが良くて、写真とまったく同じ感じで出来てました。

実際の写真 [写真提供] 石井紀久

- BIMに取り組む前と後で一番変わったところは? -

プランに使える時間が増えたことが大きいですね。お客様と3D空間を一緒にみて「こう変えたい」と言われたら「良いですよー」 ってすぐに変更できて「変更すると、ここが使いにくくなっちゃうんですよ」がすぐにわかります。「今度図面直してきますね」ではなく、その場ですぐできるのが魅力です。ご要望に一旦「良いですよー」って答えるので打ち合わせは毎回長いですが、満足いくまで話せます。家づくりそのものを一緒に楽しめる空気を作れて、設計という仕事を、自分らしくやさしく続けられる選択肢になっています。

- 今後のVectorworksの活用についてお聞かせください -

次の目標は、VRをやりたいです。絶対楽しいと思う。楽しいが一番の原動力なので、作業が辛いとやらなくなっちゃうんです。ウォークスルーも苦手なんですが、お客様はすごく喜んでくれるので上手に動かせるようになりたいですね。また、新入社員にVectorworks操作をし始める時に何から教えたら良いかを悩むことがあります。Vectorworks Universityやユーザーフォーラムをもう少し使っていきたいと思います。

松田 まり子

松田まり子建築設計事務所

【取材協力】
  • [取材協力] 松田まり子建築設計事務所 松田まり子氏 (取材:2025年9月)
  • [写真提供] 石井紀久
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Vectorworks

2D/3Dのシームレスな作図機能に、彩色豊かなプレゼンテーション、リアルなレンダリングなど、デザイナーの設計環境を支援する汎用CADソフトウエアです。

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