Vectorworks活用事例

オンサイト計画設計事務所
落合洋介

Vectorworks活用事例

オンサイト計画設計事務所
落合洋介

オンサイト計画設計事務所は、地域全体の価値を高めることを目指し、公共の広場から「星のや」などのリゾートホテルまで、多岐にわたるランドスケープデザインを手掛けられています。今回は、2020年と2023年にグッドデザイン賞を受賞した岐阜県多治見市の「虎渓用水広場」と、愛知県岡崎市の公民連携まちづくり「QURUWA戦略」の中の「籠田公園・中央緑道」の設計に携わった落合洋介さんにお話を聞きました。

図面も資料もVectorworksで完結

-貴社の業務について教えてください-

オンサイト計画設計事務所は、ランドスケープデザイン専門の設計事務所です。ランドスケープデザイン事務所としては歴史も長く、大学キャンパスやオフィス、ホテル、集合住宅、博物館・美術館など、ジャンルも多岐にわたります。星野リゾートのブランドである「星のや」には基本的にすべて関わっていて、軽井沢から始まり、海外も台湾やバリなどさまざま。建築デザインは東 環境・建築研究所、照明デザインはICE都市環境照明研究所が手掛けられているのですが、どちらもVectorworksを使用されているのでデータのやり取りもスムーズです。

3Dの使いどころ

-Vectorworksはいつから使っていますか?-

事務所では元々MiniCadを使っていたので、そのままVectorworksを使っていると聞いています。Mac好きが多いということも理由かもしれません。

Vectorworks以外のアプリは、RhinocerosやSketchUp、Adobe系などを使っています。Vectorworksでは、地形モデルや造成の切り盛りの算出などに3D機能を使っています。ただ3D機能は勉強している最中で、もっと有効利用できればと考えてはいますが、まだこの程度にしか使っていません。

3Dを作るときはテクスチャは最小限とし、リアリティを求めるというより、建築がどう見えるか、アイレベルでどういった見え方になるのかなど、模型だと限界があるところのボリュームスタディに使うことが多いです。あとは、3Dを下絵にして手描きでシングルラインにしたりというアナログな使い方もします。手描きの柔らかいものがあると目を引くんです。

シートレイヤで作成された説明資料

Vectorworksの使い方

-設計のどの段階からCADを使っていますか?-

人にもよりますが、私は図面作成、資料作成などVectorworksで完結させることが多いです。プレゼンテーションや打ち合わせ用のもの、ワークショップのときの参加者配布用など、やろうと思えば一通りのことはできるイメージですね。平面図もビューポートでスケールを変えたり、写真や図版を貼るのも簡単なので使い勝手が良いです。色表現も豊富なので重宝しています。

業務の流れとしては、最初の基礎資料があって、その中の測量図をベースにVectorworks上で作業します。それからスケッチや模型、3Dなどで検討を繰り返し、図面を完成させていきます。現場に入ってからも、施工者から受領したPDFなどをスケールを合わせて取り込み、別のレイヤで朱書きします。樹木の写真も取り込みナンバリングして、施工者用の現場指示書を作ります。概算資料などはワークシートではなくExcelです。他社に共有できるか否かが要因なのですが、質疑リストや確認事項リストなどはExcelで作ったものを画像にしてVectorworksで資料に貼ることもあります。

水音に囲まれた居場所が作られている

樹木や車などよく使用する添景は、Vectorworksでシンボルにして配置しています。事務所の中で共有されているものがありますが、図面のテイストや表現に合わせて都度調整し、高木などは影をハッチングで作ってアウトラインと組み合わせてシンボルにしています。

私はVectorworksの作業画面の設定で、よく使う機能はオリジナルのショートカットを割り当てています。ビューポート作成やDWG取り出しなど、個人的に多用するものは全部です。そのオリジナルの作業画面をDropboxに入れておき、Vectorworksのバージョンが変わったり作業場所が変わったとしても、ダウンロードして同じ作業環境ですぐ作図が始められるようにしています。

事務所で共有している図面のテンプレートファイルには、線種をクラスで設定してハッチングのリソースが入っているものを用意しています。このテンプレートから始めれば所内での共同作業に混乱することは少ないですし、クラスが増えて管理ができなくなることも避けられます。

多彩で伝わりやすい虎渓用水広場の平面図

考えることが大体できる

-携わられた虎渓用水広場について教えてください-

JR多治見駅の北口正面にある広場です。虎渓用水という先人たちが難工事を経て引き込んだ用水が市街化されて見えなくなったものを活用し、再び見られるようにしたものです。この地の原風景を思わせる水と緑に溢れたまちの顔を駅前に出現させることを意図して計画し、2020年にグッドデザイン賞を受賞しました。

このときの資料は、Landmarkの「平面を回転」機能で断面図を描いています。あとはVectorworksでは色味を多数のパレットから選べるので、奥行きのある表現やグラフィック的な表現もしています。Vectorworksは色数が多くPANTONEもあるのが良いですね。施工者とのやりとりの関係上実際あまり使うことはないのですが、心意気が良いと思っています。

ハッチングも自分で作れるので、水が流れている表現もハッチングで作ったり、画像が重すぎたらちょっと解像度を下げて軽くすることも、なんでもできる。Vectorworksは「こういう資料を作りたい、どうしようかな」と考えることは大体できます。

すり鉢形状がわかりやすい断面図

-携わられた籠田公園と緑道について教えてください-

こちらは、愛知県岡崎市の公共空間をQの字で結んだエリアを「QURUWA」と名付けて公民連携でまちづくりを行う計画があり、その一部である公園と緑道の整備をしたものです。設計時の全体の考え方としては、一人でも大人数でも滞在できる居場所になるよう計画しています。

公園では、あずまややパーゴラ、ステージも設計を行い、トイレは地元の建築設計の方にも協力いただき図面をまとめました。緑道には徳川四天王の石像を置く必要があって、寸法をもらってVectorworksで配置図や写真をトレースして石像の立面も起こしました。それをシートレイヤ上でレイアウトし、石像の背後の高木との関係性を説明する資料を作成しました。

籠田公園の地下には駐車場があり、その出入り口が中央緑道にあります。出入り口付近はどうしても歩行者と車両動線が交差してしまうため、危険がないように橋上の大階段テラスを計画し、歩行者が安全に通れるルートを確保しました。地形として河岸段丘となっていることから、坂道を歩いているうちにテラスの上まで到着し、遠方まで望めるテラスとなっています。また、車が駐車場に入っていくところが見える場所でもあります。

籠田公園と中央緑道・全体写真
籠田公園の平面図

機能をさらに知って使いこなしたい

-今後Vectorworksで取り組みたいことと期待することは?-

Fundamentalsで使い始めて途中からLandmarkにグレードアップしたのですが、全部の機能を使っているわけではないので、グラフィック凡例やレコードフォーマット、またLandmarkの専用機能もどんどん使っていきたいです。

Vectorworksに期待することは、文字機能の強化です。コンペに応募するためのプレゼンテーションや学会用の資料などもVectorworksで作るのですが、行間や文字間を簡単に調整できたり、部分的にハイライトを入れたりできるようになると嬉しいです。あとは、地形モデルの使い方がわかるチュートリアルや解説が欲しいです。3Dで検討したいと思うときは地形が複雑なことが多いので、そうなるとそもそも作るのが難しいんです。この手順でやっていけばどんな形状も作れる、というものがあると助かります。

車道を座って見下ろせる珍しい景観
落合 洋介

オンサイト計画設計事務所

  • 所在地:東京都港区
【取材協力】
  • [取材協力]オンサイト計画設計事務所 落合洋介氏(取材:2024年11月)
  • [写真提供]吉田誠/吉田写真事務所
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Vectorworks

2D/3Dのシームレスな作図機能に、彩色豊かなプレゼンテーション、リアルなレンダリングなど、デザイナーの設計環境を支援する汎用CADソフトウエアです。

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評価版(トライアル)

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