Vectorworks活用事例

安西デザインスタジオ
安西一憲

安西デザインスタジオ 代表 安西 一憲 氏

Vectorworks活用事例

安西デザインスタジオ
安西一憲

「三鷹の森ジブリ美術館(三鷹市立アニメーション美術館)」や「ジブリパーク」をはじめ、個人邸から規模の大きな屋外空間までさまざまな物件を手掛けられている安西デザインスタジオ。資源を大切にするコンセプトの下、場に調和した居心地の良い空間を生み出されています。

今回は、代表の安西一憲(あんざい かずのり)さんに、Vectorworksとの出会いから業務の工程と魅力について語っていただきました。

手描きの良さを残す

永く残るものを

-貴社の業務について教えてください-

公園・緑地から個人の庭まで幅広く手掛けており、業務内容は「屋外空間のデザイン」と称しています。大学卒業後電機メーカーのプロダクトデザイン部門で5年ほど働いていましたが、永く残るものを作りたくて遊び場のデザインに携わりたいと考え、大学院に戻りました。修了後、公園などの設計を手掛ける事務所に就職した後独立し、現在に至っています。元々携わっていた立体的な要素、植物他が融合した魅力的な空間を提案したいと考えています。

アプローチ周辺と主庭のパース

デジタルで着色するツール

-Vectorworksはいつから使っていますか?-

2014年からです。他社の2D CADを20年近く使っていたのですが、着色平面図を作る際に色数が少なかったり透過ができないことが残念だと感じていました。この時期はある程度CADで形を作って後は手描き、手や他のソフトで着色をしていましたが、直しが大変だなと感じていました。

当時一緒に働いていた仲間がVectorworksを使っていて、デジタルで着色したものもここまでできるのだったら良いなという印象を持ちました。また、個人邸の仕事が増えてきていて、協働するほとんどのアトリエ系建築設計事務所がVectorworksを使用したことや、Windowsが使いにくいと感じていたので、Macでも使えるCADを検討していたタイミングでもありました。

実際に使ってみて、カラーの図面が作りやすい、というのが一番の印象です。表現方法の選択肢が広く、Illustratorのような操作で描けるため、かなり業務が捗るようになりました。

個人邸の使用材料と植栽のイメージ

ニュアンスを出したいものは手描きで

-設計のどの段階からCADを使っていますか?-

検討の段階では今でも手描きがメインです。まず建物と敷地の境界だけCADで描いて、ある程度決まってきたら全体をCADで描きます。動かせないものの線はCADで描いて、植物や自然石などのニュアンスを出したいものは、計画段階では手で描き加えることもあります。CAD化の際の樹木はスケールや見やすさにより、丸などの記号的なものやリアル形状を選択します。

普段の業務で3Dパースを作ることはほとんどありませんが、こちらの個人邸の時は3Dで提案しました。まだVectorworks導入直後だったこともあり、拙い表現のところが散見されますが、空間のイメージはより伝わりやすくなったと思います。

寺院外構の2024年時点の竣工部分。分割して着工中

提案書は細かくわかりやすく

-最初の段階でも提案書は細かく作りますか?-

私の場合は作ることが多いですね。提案資料と出来上がった時の差が少なくなるように、図面以外では写真やスケッチなどでイメージをできるだけ伝えるようにしています。1案の時もあれば2、3案提示の時もあります。具体的にすることでお客様の好みや持っているイメージとの違いを見つけることも大切です

竣工した箇所。古さと新しさの融合

新旧の融合

都内の寺院の外構を設計した際は、一度に全体を施工できないので最初にマスタープランを作って、それから分割して順番に実施設計と工事をしています。2016年から関わっていますが、現在はマスタープランの半分くらいまで竣工している段階で、全体の完成はまだ先です。 江戸時代以前から続いているお寺のため、歴史の継承として残すところと、 建物と合わせて新しくするところのバランスを考えながらデザインをしています。敷地内には大きな既存樹や歴史ある建造物など保全や利活用するもの、また新たに建て替える建物などの与条件があったので、まずそれらをプロットしました。当初のマスタープランはそこに手描きで検討して、方針がまとまってからCAD化しています。敷地が広いのでここでは植物もかなりの種類を使っています。

この時も3Dができたら良かったのですが、時間と能力的なこともあり Vectorworksでは2D図面だけを作りました。分かりにくそうなところは手描きのスケッチを追加したりイメージ写真を提示しました。

フェンス類の詳細図

図面作成は多岐に渡り

造園の現場では、3D CADを使っている割合は全体では少ない印象です。公共や規模が大きな造園設計の場合、図面の枚数が多くなり、工事前の現況・撤去関係、配置や造成などを指示する平面図や断面図、施設や植栽などの平面図、給水排水、電気などの設備平面図、それぞれの構造図など多岐に渡ります。いずれ3Dの検討から各種図面、パースや資料の作成まで一貫してできるようになれば省力化、一元化が図れると思います。

凡例に数量も記載する必要があるので、グラフィック凡例機能が便利だと思います。また、フェンスはほとんどの現場で必要になるため、フェンスツールがかなり使いやすくなっているようなので活用できそうです。パネル部分にシンボルが使えるので自由度が高いですね。

実際の竣工写真。周りと調和するフェンス

手描きの雰囲気を伝える工夫

-手描きの線の柔らかさとCADにしたときの違和感はありましたか?-

ありました。硬さや単調さがなるべく出ないように、フリーハンドツールで描くときも「スムーズなし」で描くことが多いです。マウスで微妙にブレを出しながら描く際に手がプルプルして(笑)、最後に到達する前にポチッとしてしまうこともしばしばあります。そんな時はオブジェクト情報パレットの「閉じる」を使用しています。ただ、Vectorworksは完全に図形を閉じなくても色がつけられるのが良いですね。樹木は円ツールやシンボルなどで割とバリエーションをつけられるのですが、低木群、草花群を描く場合はフリーハンドの線で変化やにぎわいを出したりもします。

すでに可能なのかもしれませんが、3Dの植物を並べる際に、同じ種類で同じ大きさの植物でも実際は違いがあるので、もっと柔らかく変化に富んだ雰囲気を簡単に出せると良いなと感じます。表現がリアルになるほど実際に導入する植物との違いを少なくなるように気をつける必要がありますね。

-Vectorworks2024 UP4で新たに搭載されたAI Visualizerの機能で3Dイメージ図ができますよ-

プロンプトに、アニメーション風、手描き風、色調など入力すると、イメージが画像でできあがるんですか。これ良さそうですね。「テキストプロンプトのみ」で図形がない状態でもできるし。いずれVectorworksだけですべてが完結しそうですね。別のソフトを買わなくても良くなるかも知れません(笑)

3Dをもっと活用したい

-これから挑戦したいことは何ですか?-

導入して10年経ちますが、まだまだ限られた機能だけで業務をこなしている状況で、Vectorworksを活用しているとは言えません。まずは3Dをはじめ各ツールをもっと使いこなせるようになりたいと思います。特に地形モデルや植栽のデータを活用できれば、お客様への説明がより分かりやすくなると感じます。

安西一憲

安西デザインスタジオ 代表

東京藝術大学美術学部卒業後、株式会社日立製作所勤務。その後東京藝術大学大学院に入学、同大学大学院デザイン専攻修了。株式会社森緑地設計事務所に入社し、1999年安西デザインスタジオ設立。「三鷹の森ジブリ美術館(三鷹市立アニメーション美術館)」や「ジブリパーク」をはじめ、さまざまな屋外空間デザインを手掛ける。

  • 安西デザインスタジオ 代表 安西 一憲氏 (取材:2024年8月)
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Vectorworks

2D/3Dのシームレスな作図機能に、彩色豊かなプレゼンテーション、リアルなレンダリングなど、デザイナーの設計環境を支援する汎用CADソフトウエアです。

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