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建築生産と情報技術の結合がデザインを進化させる
「アルゴリズミックデザインによるデザイン教育の可能性」
慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授 池田 靖史 氏 |
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慶応義塾大学大学院
政策・メディア研究科
教授 池田 靖史 氏 |
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午前中の基調講演には、「アルゴリズミックデザインによるデザイン教育の可能性」と題して、建築家で慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科 教授 池田 靖史氏が壇上に立ちました。
「本日はデザインにおけるCAD教育についての話しだけではなく、もう少し大きなところまで話しを広げたいと思います。」と前置きし、「なぜならデザインにおけるCADを中心としたコンピュータの利用は、教育だけではなくもっと社会にも広がる重要な意味を持っていると考えるからです。」とCADやコンピュータが持つ大きな可能性について語りだしました。
まず、その根拠の一つとして、1枚のオブジェの写真をスクリーンに投影し、「これは四方が7.5メートルもある物なんですが、実はこれはD-shapeという3次元プリンタで出力された実物大の東屋なんです。」「3次元プリンタと言っても超大型のインクジェットプリンタのようなもので、実物大のものをコンピュータから直接出力できるという実例です。」と参加者の関心を集めました。
そして、「今まで、CADやコンピュータを使ったデザイン教育を進めていく中で、実際のモノ作りの現場から、実社会とのギャップを指摘されたり、デザイン教育の弊害のような批判を受けることがあったのではないでしょうか。」と、デザイン教育の現場にある不安要素を指摘し、「しかし、一方でこの例のようにデジタル・ファブリケーションと呼ばれるCADから一気に形を形成できる仕組みというものは、これらの意見に対して大きな意味を持つものとなりえると考えています。」と情報技術を利用するデザインの可能性の高さを説明しました。
また、この例が持つもう一つの意味として、「今まで建築教育において、床、柱、仕上げ、構造などの部品をどう組み立てるかという教育が行われてきました。これは建築の根本でもある建築術と言えます。これにより"多くの建物は四角い"と言ってもいいでしょう。」「お見せしている例は、これらの順序を全て取り払って、CAD上の自由な形状が、いきなり目の前に現れます。しかも実物大で現れる訳です。」と、従来の建築の常識さえも覆す技術が既に現実となっていることを解説、今やCADは、単にデザインだけをするツールではなく、デザインとモノ作りを繋ぐための重要なツールとなりつつあると解説いただきました。
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次にアルゴリズミックデザインについては、ガウディのサグラダファミリア改修工事で、石膏模型を3次元スキャナ取り込みし、デザイン意図を汲み取りながら、施工しやすい方法を発見するためにアルゴリズムやBIMが活用されている例や、早稲田大学と慶応大学共同でアルゴリズミックデザインを体感できるプラグイン「Growing Object」を使ったワークショップを開催し、短時間ながら規則性のない形で生成されるデザインとその研究成果などの例をいくつも挙げ、「アルゴリズミックデザインは奇異な形を作るのではなく、実務的な問題を解決するためにアルゴリズムがあるのです。」と、実務におけるアルゴリズミックデザインの有効性を解説しました。
講演の中では、「昨今の多くのBIMでは、柱や梁などを直行3次元的にレイアウトするグリッド上の建物を想定しているものが多くあります。言わば" 2次元図面化の自動化 "を目指しているものをBIMと呼ぶのであれば、それは大きな間違いです。」と自由なデザイン能力を奪うBIMの方向性についても考えを述べられました。
講演は、濃い内容のものとなり、デジタルファブリケーション、アルゴリズミックデザインによって、デザインとモノ作りの現場が大きく変わる可能性と兆しが感じられる講演となりました。 |
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